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無力
大学4年生になり、サークルの運営幹事の大役も終え、僕も割合に時間ができてきました。
僕はとあるコールセンターで電話の受発信のバイトを初めました。
バイト先は気のいい人間ばかりで、すぐにみんなと打ち解けることができました。
そんなバイト仲間の中にいたのが、ユキ(仮名)です。
ユキはまわりのオトコどもの注目の的になるくらいの美人でしたが、誰にでも明るく、優しく接するタイプでした。僕はユキのことをすぐ好きになりました。
ユキはモデルでもありましたが、それだけでは食べていけないので、このバイトをしていると話してくれました。
バイト仲間同士では、よく仕事上がりに飲みに行ったりしました。
人一倍飲むユキを見ていて、「良く飲むコだなー…」と思っていましたが、僕自身お酒は大好きでしたし、特に気にしていませんでした。
ある日、二人で飲んだ帰り、終電を逃した僕は、ユキに誘われて、彼女の家に泊まることになりました。
電車を降り、ユキの家まで歩きながら、酔っ払っているユキは、僕にいいました。
「ね、私達つきあおっか」
僕の返事はもちろんYESでした。
ユキの家に着き、部屋に入った僕は驚きました。
ユキの部屋には、おびただしい数の、空の酒瓶が散乱していました。
ユキは僕に、初期のアルコール依存症であることを告げました。
一日の仕事中にも、何度か飲酒をしていたそうです。
(たしかに、人員管理が非常に曖昧な会社ではありましたが…自分を含め、誰も気付かなかったのはビックリです。)
ものすごく驚いたのと同時に、なんとか、彼女を立ち直らせたいと思ったのを覚えています。
付き合い出してみると、彼女は自分が思った以上に不安定な人でした。
僕なりのアドバイスをしてはいたものの、どうしていいのかわからないというのがホンネでした。
良かれと思って言ったことも、彼女にとっては重かったかもしれません。
何より、彼女に意思がなかったことは、自分にとっても大きなショックでした。
ある日、彼女は言いました。
「もう、私のこと、ほっといて。」
彼女は、バイトをやめ、別の男性と付き合い始めました。
もっと何かできなかったのだろうか。
もっと上手にできなかったのだろうか。
おこがましいのでしょうが、自分の無力さを責めました。
彼女がそれからどうなったのかはわかりません。
願わくば、幸せな道を歩いていてほしいなと思っています。
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